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鈴木康博 / “明日の風に吹かれて” ~ 進む先にあるもの [和ネタ(J-AOR)]

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 鈴木康博のオフコース時代のセルフカバーアルバム「FORWARD」が12月8日に発売となった。所属したバンダイ・ミュージックが部門撤退して、98年のアルバム『ANYONE』を最後にここのところ自身のインディ・レーベルからの作品発表が続いていたが(*1)、今作は古巣・東芝EMIからのリリース。加えて、ジャケットのフロントを飾るポートレートには、オフコース・ファンにはお馴染みの写真家・田村"TAMJIN"仁氏を起用するなど、いにしえのファンを懐かしさでくすぐっている。



 アルバムは、全13曲。内12曲が彼の代表曲を「LOOKING BACK(=リメイク)」したもので、これに加えて「もしもオフコースが今なお続いていたのなら」とのコンセプトで書き下ろされた話題の新曲、“明日の風に吹かれて”がその冒頭を飾る。しかし、彼自身の語ったインタビューによると、当初のその製作意図は煮詰まらない内に途中で一向に進まなくなってしまい、結局は「再会」をテーマに、オフコースに対する彼の現在の気持ちを歌うという、詞を前面に押し出したコンセプトに変更されてしまったのだそうだ。鈴木康博の思い描くところの、「現在のオフコース」のサウンドや楽曲がどのようなものになるのかを、僕は何より楽しみにしていたので、この点は少々残念に思えるところかも知れない。

 少しばかり不穏な気分さえ起こさせるるようなギター・サウンドから始まるこの曲は、敢えて言えば、自らAOR回帰を口にした『ANYONE』のカラーに近いものを感じさせる。複数のギターをオーバー・ダビングしカッティングと短音ミュート・バッキングが中心のシンプルなアレンジ。中盤とエンディングにかけ展開されるギターのソロが、いつもながらメロディアスに組み立てられているのが嬉しい。僕は何となくだが、エリック・タッグの97年作「THROUGH MY EYES」の1曲目、“What Say...?”でのマイケル・トンプソンのギターを思い起こした。(※偶然だと思うけど、このアルバムをリリースしていたI.D.Netってレーベルの作品を販売担当していたのもバンダイだった。)



 サウンド面でもうひとつ。彼が意図してオフコースのサウンドを、この曲に滲ませるために使ったとも思えるクラビネットの音色(*2)は、ファンには決して無視出来るものではないだろう。

 チェンバロにも似た、少々ユニークにさえ思える音色のこの鍵盤楽器は、スティービー・ワンダーの72年全米No.1ヒット“SUPERSTITION(迷信)”で、その存在が広く一般に知られるところとなったため、あまりにも彼のイメージが強いものだ。そのクラビネットを、初めてオフコースのサウンドに用いたのは、今も昔も彼をフェイバリットに挙げる鈴木の提案に依るものだったのだろうか、それともキーボード担当の小田和正のチョイスだったのだろうか。

 例えば、思い出して欲しい。若々しくギターがドライブする“季節は流れて”や「LIVE」での“Run Away”、実は結構クロスオーバーなサウンドが実験的だった“あなたのすべて”を。クラビネットがオフコースのアップテンポ・ナンバーに、独特の粘着感を持ったリズムと、“黒っぽい跳ね感”を与えているのがお判り頂けることだろう。

 さすがに「この黒っぽさをオフコースのサウンドに加えてみよう」とまでは二人とも言わなかっただろうが、多分に当時のボーカルのスタイルから受ける印象が大きかったことを差し引いても、かつて「秋ゆく街で」で歌われた“What's Going On”に連なるメドレーの“Where Is The Love“や“You Are Everything”があまりにも「白」にしか聞こえなかった(=黒く出来なかった)ことを思えば、クラビネットが与えた、彼らのサウンドやリズムへの変化は、決して小さいものではなかった筈だ。

 そして、僕はオフコースのサウンドに「黒っぽさ」を、より多く持ち込んでいたのが鈴木康博だったと思っている。ベンソンを憧れのギタリストに挙げ、カールトンも好きだと言う彼が、例えばクルセイダーズの“SPIRAL”を聴いてなかったとは、僕には到底思えない。このJazz、Fusionのエッセンスに、スティービーらのソウル色を加え、更にEarth,Wind & Fireの“SEPTEMBER”など、Disco的なダンサブルなものも好きだったという彼の作る音楽に、元々そう言った音楽のミクスチャーたるAORの色彩が強かったのは、至極当然のことだったのではないだろうか。



 話を“明日の風に吹かれて”に戻そう。

 驚かされたのは、曲にではなくその歌詞にだった。ここまでストレートに語るものなのか。
オフコース脱退以降、頑ななまでに否定していた、グループとしてのオフコースに対する彼の気持ちは、何を契機に解されていったのだろうか。

 僕から言い出した別れ なのに身勝手だよね  ため息つく なくしてから始まる 愛もあると  切ないから感じる 遠いはずの君が誰よりも close to me

 今までにも、小田和正との融解を歌ったのでは?と勝手に思い込みたくなる様な作品がなかったわけではない。でもその都度彼は否定して来た。だが今回はわけが違う。予めオフコースに対する今の気持ちを歌う、と前置きした上での作品なのだ。これでファンが騒がないわけがない。



 正直なところ、僕は二人のソロ活動をそれぞれに楽しめていることもあって、再結成にはそれ程の「熱烈な思い」は無い。単純に、今の二人の音楽性の違いが、果たして上手く混じり合うのだろうか、とも思う。それでも、もし同じ舞台に立つことが決まれば、喜ぶだろうし、期待もするだろう。実際に、再び二人の声が重なるのなら、彼らの音楽を長く愛する者にとって、それが素晴らしい思い出になるのは間違い無いだろう。

 でも、それよりも、そのこと以前に嬉しく思っていることが、僕にはある。
今、鈴木康博と小田和正が、揃って「オフコースを大切に思っている」と、公に知らしめたこと。
そのことなのだ。

 われわれ聴き手が、“解散してしまったバンド”を今でも愛しているのに、そのメンバーが、過去は過去のものとして置き去りにして、かつ肯定的に捉えていないことをステージ上から伝えられるのは、その度、とても悲しいことだった。例え、もしかしてそれが、心にもない強がりから語られていたのだとしても。

 だから、彼の「心変わり」を公にしてくれた詞が、言葉が、嬉しかった。
オフコースのあの頃に、懐かしく思いを馳せている、と言ってくれて嬉しかったのだ。

 この先、二人のジョイントがあろうとなかろうと、更に飛躍して5人の再結成があろうとなかろうと、気持ちが繋がっていないのでは何も意味が無い。「もう一回一緒にやろう」と自然に思えたら、やってくれればいい。

 旧友である二人が、ひとつ同じ場所でギターでも軽く爪弾きながら、笑顔で話している。そう、まるで月曜組曲の中で、イメージとして挿入されている若き日の写真を、今の彼らに、そのまま置き換えた様な。そんな光景こそが、彼らを忘れないでいるファンが、今一番に求めているものだと、僕は思う。


(*1)・・・シングルはマーキュリーから1枚リリース有り
(*2)・・・ここではシュミレート音源と思われる






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  • アーティスト: 鈴木康博
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2004/12/08
  • メディア: CD



タグ:オフコース
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